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摘花・摘果

  1.薬剤摘花

 

​ (1)側果(花)を狙う場合 

  

  ①中心果が確実に受粉・受精する必要がある。その方法には、人工受粉が確実である。また、受粉作業が困難な場合は他品種の混植が必須で、訪花昆虫に頼るしかない。開花中の天候によっては、訪花昆虫の動きも緩慢になりリンゴ園に訪れないこともあるので、人工受粉ができる体制を事前に整えておく必要がある。また、混植において他品種を植栽した場合、狙いとする品種と開花時期がずれ、過剰摘花となることもあるので、クラブアップルを利用することが望ましい。

 

  ②1回目の散布タイミングと薬剤選択(以下ふじの場合)

 タイミングの見極め方法は❶目通りの中心花の雄しべが自然開葯されたことを確認したら❷中心花の目通りの中心花の花びらが1~2枚散り始めたら❸天候によるが人工受粉後24~48時間後等々生産者により、またどこまで側果(花)を落とすかの目的によってタイミングが異なる。薬剤は、効果がマイルドなエコルーキーか、同シャープな石灰硫黄合剤を使用するかは農家によって異なり、石灰硫黄合剤を使用する場合は、前述のタイミングより微妙に遅らせているケースが多い。

  

  ③2回目以降の散布タイミング

 2回目以降は、天候状況により1日後または2日後、使用薬剤も選択している。

 

(2)腋芽花を落とす場合(2回目または3回目以降)

  頂芽に比べ腋芽はバラバラに開花し、1回の散布で全摘花は無理なので、複数回の散布が必要となる。使用薬剤は、石灰硫黄合剤を使用する。(使用回数に注意する)

*両剤とも気温約13℃以上の条件下での散布が良いとされていて、散布後いかに早く乾くか重要である。果実にサビを生じるリスクがある。

 *本散布にあっては、気温変化による生育状況をよく観察し行う。

 *散布後の薬剤の乾きは極めて重要なので、散布後降雨にあわないよう天気を見定める。

 *受粉環境が整っている園で実施する。 ⇒ クラブアップル(別頁)

 ⇒以上の方法で行うと、1樹(60果前後が最終着果量)当たり、荒摘果で20~30果、仕上げ摘果で10~15果を摘果する程度となる。ガク立ちがしてくる果実がほとんど見えないので、本年は全滅かと思うほどである。

 

 ⇒つがるや紅玉、ぐんま名月等は、ミクロデナポンでバラバラとうまく落ちるので、薬剤摘花は行わない。

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 ⇒シナノシリーズ;特にシナノゴールドは質が悪い。⇒ 食塩水散布が効果高い。散布濃度は2%程度にしないと効果が出ないが、塩害も甚だしいのでお勧めはできない。シナノスイート、シナノゴールド、シナノドルチェはふじに比較すると、石灰硫黄合剤はかなり効果が鈍い。現地では、相当な効果を上げている園もあることから、散布タイミングがふじと違うことがわかってきたし、シナノスイートは石灰硫黄合剤よりもエコルーキーの方が効果が高い現地事例もある。また、受粉後から受精されるまでの時間が3~20時間と品種により違うこともアメリカで研究発表されている。 また、マシン油を200倍程度を加用すると効果が上がる報告もある。

​※毎年、薬剤摘花を行っている園では、優良果そう(花芽)が増えることが近年明らかとなっている。となれば、当然のことではあるが優良な果実生産に結びつくので、是非薬剤摘花を取り入れたい。薬剤摘花の翌年への花芽形成の効果は、実施した年から効果が発現する。

※海外事例では、ATS、LSO、BAなどが使用されて効果を上げているが、いずれも国内では登録がない。

 

(3)石灰硫黄合剤の使用上の注意点

  葉焼け、果実へのサビ発生  

  前述もしたが、気温が概ね13℃以上の時間帯に散布することが重要だが、散布後24時間以内に30℃以上になるような予報が出ている場合や薬液が乾くのに時間を要する時間帯や多湿条件下では薬害発生のリスクは上がるので、散布を避けたい。

  

2.薬剤摘果

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  代表的な薬剤は、ミクロデナポン水和剤85 1,200倍(+展着剤)である。使用時期が満開2~3週間後となり、しかも着果状況や樹勢により効果がばらつき、散布後の効果発現までに何日も要することから、摘果の遅れが発生する。以上のことから、本剤を使用することより薬剤摘花を主体に考えた方が良い。展着剤はアプローチBI 330倍が一般的だが、各地の現地試験結果から廉価なネオエステリン5,000倍程度で、ほぼ同等な効果が得られていることが報告されている。散布タイミングは、ふじでは9~11㎜とされているが、つがるの16~17㎜と同タイミングでの散布でも腋芽を主体で摘果するのには、かなりの効果が得られる。また、秋映や紅玉は反応がつがる並み、シナノスイートでも遅れ花には効果がある。シナノゴールド・シナノドルチェは、全くと言っても過言ではないほど効果がない。​近年、アミノベストを混用することにより、効果アップが期待されるとしている。また、散布した薬液を如何に早く乾かすかが重要とされ、クレフノンやバイカルティなどの混用する農家もいる。

 

3.適正な着果基準

 

  「4~5頂芽に1果」「1果当たり50~60枚必要」などといわれても、実際にはピンと来ない。そこで、海外で行われている方法を若干アレンジすることにより、利用できることがわかってきた。​

 

 ⇒幹断面積当たりで着果量を判断する​

  ①M.9と品種との接ぎ木部分より、20㎝上の直径を測り次表に照らし合わせる。

  ②品種により着果量は異なる。

​  ③あくまでも樹勢により加減する。

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  海外において、ガラなどの隔年結果がおきにくい品種で、幹断面積1平方センチ当たり6果、隔年結果しやすい品種で4果とされている。海外では200~250gサイズの生産目標に対し、日本では300~350gであることから、幹断面積当たりの着果基準は、リンゴの「個数」ではなく「重量」で換算する必要がある。結果、日本では一般的な品種の着果基準として、幹断面積1平方センチ当たり3果が無難であると考える。

4.腋芽花の摘花及びあら摘果時期と翌年への頂芽の花芽率  (県果樹試験場データより)

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  あら摘果時期が、満開後25日、35日の区では明らかに花芽が不足し、隔年結果となる樹が見られた。満開15日後でも、摘花を実施していなければ、平均花芽率は50%を下回り、花芽の着生が不安定となった。

  

 

 

着果基準.jpg
無題.jpg

 高密植栽培では、目標収量は10a6トン以上を狙いとしている。6トンとは300~350gのリンゴ×17,000~20,000果となる。1果そうに5果、5~6頂芽に1果、そこに腋芽まで花が咲くとすれば、約80~100万もの花が咲く。それを20,000に摘果(花)するのだから正に花との戦いである。品種によっては、摘果が遅れ過剰に着果させると適玉生産ができなくなるばかりか、隔年結果するので1日も早い摘果(花)が求められる。 そこで、薬剤による摘花・摘果をとりいれないと作業が間に合わない。薬剤摘果(花)の効果、結果をどこまで求めるかによって、その方法は異なる。

5.樹勢判断と対策

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  高密植栽培は満開日(*1)から40日後くらいには、ほぼ100%の新梢が停止することが望ましい。この新梢停止期の早晩でまず大体の判断ができる。令和5年では満開日が4月20~25日なので、新梢停止は5月末~6月の頭となる。例年でも6月上旬となる。コーネル大学の報告では、定植4年目以降の主幹延長枝は40~50㎝程度、側枝からは15~20㎝程度の新梢発生が好適樹相としている。これが5月下旬にほぼ停止したとなると樹勢は明らかに弱いと判断することができる。     

 (*1)満開日;樹全体の頂芽花の70~80%開花した日

  5月下旬に停止してしまうようなことでは、良い果実品質を求めることは困難である。そこで、手っ取り早い対策としては、①着果量を減らすことが何よりの薬となる。(特に着果量の少ない樹や隔年結果したような樹と比べると明らかに葉色が薄緑で葉の大きさも小さいのでわかる)②即効性の窒素(尿素や硫安などでもいいが、出来ればNPKの3要素が入ったもの「N30」など)を追肥する。 ⇒ 追肥をすると、新梢自体は伸びなくても明らかに葉色は濃い緑色に変わってくる。

  この対策を行っても、樹に変化がないようでは原因は違うところにある。例えば、園全体に排水不良だったり、台木の地上部長が極端に長かったり(30cm以上もある)で、もともと生育環境が整備されていないことだ。

​                                2023.05 全農長野生産振興課 指導会資料より一部改

  

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