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  イタリアから学ぶ優良フェザー苗の確保

 

 高密植栽培を拡大するに当り、喫緊の課題が優良フェザー苗の確保及び苗木価格である。南チロルでは調査を行った「Griba」「ブラウン社(KIKU)」だけでも年間300万本を上回る苗生産を行っており、100万~150万本/年程度の供給能力がある。EU全体では1,100万本の供給能力があるとされており、苗木業者間の競争原理が働くことから、高品質な苗木が安定的かつ安価に供給されている。イタリアでの苗木生産は、M.9台木を生産する業者とフェザー苗を生産する業者に分業化されている。また、種苗業者はEUの認証制度に基づいたウィルスフリーの穂木の採取ほ場も所有しており、結実する果実品質を確認しながら安全安心な生産体制を確立している。それらの体制にあわせ、苗木のトレサビリティも徹底されている。

 苗木価格は6~7€/本(850円~900円 1€≒140円 M.9台木は0.7€/本)での取引がされている。本県の苗木供給体制はようやくスタートラインに着いたばかりで、個人育苗を合わせても10万本程度である。(種苗業者30,000本 全農長野60,000本 生産者20,000本 R5年)

 今後、高密植への気運が高まり苗の需要量が増加した場合、全く足りない状況に陥ることが想定される。フェザー苗の供給を増やすためには、M.9台木の生産供給体制の整備が不可欠であるが、現在大規模なM.9取木ほ場を整備しているのは、全農長野が委託生産を行っている朝日村のほ場のみである。M.9の供給には横伏せ法による取木ほ場の整備が必要であるが、ある程度の数量を確保するためには3年程度の株の養成年月を要するため、早急な対策を講ずる必要がある。フェザー苗の生産体制を整備するにあたり以下の課題解決が重要となる。

  • 取木ほ場の整備を進め、M.9台木の潤沢な供給体制を構築すること

  • 連作が不可なため土地の確保体制を整備すること(フェザー苗)

  • 安定生産のための技術確立を行うこと

  • 大規模な育苗を行うため、機械利用体系を整えること

  • 優良穂木の確保体制の整備を行うこと

 

 苗木価格については、2,000~2,500円と南チロルの2~3倍近い状況にある。しかし、全農長野が委託生産を行っているフェザー苗は約1,300〜1,500円(最終売価)であり、種苗業者の供給価格の半値近く大きく乖離をしている。種苗業者の価格の高い要因としては、生産体制が脆弱なことと、従来の商慣習に基づく取引のままであることに起因していると思われる。

 フェザー苗の増産体制の整備と苗木価格抑制には、前記の課題解決に向け行政・種苗業者・系統を上げて取組む必要がある。当面、全農長野では委託先の生産数量の拡大と新たな委託先の確保により、増産を図る計画をしているようである。合わせて、M.9取木ほ場の拡大を進め台木の安定供給を進めるよう予定しているとのこと。また苗木の増産体制の整備と合わせ、品種ごとの需要の把握が重要で、かつ受注生産方式など需要に合わせた増産を進める必要があり、そのことが苗木価格抑制につながる。

 

 今日、果樹経営支援対策事業がリニューアルされ、新植でも10a 93万円(未収益期間支援事業含む)もの支援を受けることができる。支援策は農家にとってとてもありがたいが、永遠にあるものではない。支援があるから、苗木価格が高くても良い、または高くても仕方がないという発想は違う。本来、支援がなくても新改植が積極的に進むような価格帯でないといけないはずだ。

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